だるま屋少女歌劇

1935年(昭和10)5月:少女歌劇タイムス

一日より二十四日まで 夜七時開演

一、五、一二、一九は 昼夜二回公演

昼は一時半開幕

七日は定休日につき休演させて戴きます

福井駅前 だるま屋

電話代表一七三〇番

五月公演番組

【一】美はしの友情 三つの小皿 五場

塲割

第一場 並木道

第二場 隣り合(酒屋)

第三場 同 (果物屋)

第四場 國道筋

第五場 留子の家

登塲の人々と配役

チビ公(北●●七)自轉車屋の小 霞浦子

ノロ公(小谷辨吉)酒屋の丁稚  千草麗子

留子(吉岡留子)果物屋の子守 春日陽子

女學校の先生 芳野壽美子

女生徒 大ぜい

果物屋のお神さん(おとら) 夕月照子

〃  主人(●●) 泉澄子

自轉車の主人(並木大蔵) 筑紫光子

留子の父(吉岡金助)  如月冴子

留子の母(〃お安)  芳野壽美子

隣のお神さん(おきみ)  彌生伶子

其他果物屋の客、通行人等

純情ロマンス
ネメチエック少年の夢(大尉の卷) 6景

プロローグ

第1景 うわごと

第2景 相談

第3景 大尉ネメチエツク

第4景 戰闘準備なる

第5景 ネメチエツク大尉病篤し

第6景 仲直り

エピローグ

ネメチエック君  藤波珠子

ボカ君 日野綾子

コルナール君 富士峯子

ゲレブ君 花丘美智子

ツオナコス君 濱眞砂子

チエール君 泉澄子

リヒター君 櫻木美奈子

ジユリアス君

犬(ヘクター) 霞浦子

フエリ・アツウ君 夕月照子

A君 如月冴子

B君 筑紫光子

C君 千草麗子

D君 芳野壽美子

E君 御船明子

F君 彌生伶子

G君 春日陽子

ネメチエツクのお父さん 如月冴子

〃      お母さん 千草麗子

お醫者様  芳野壽美子

ラップ先生

お客樣    筑紫光子

【三】ダンス・エ・シヤンソン春三部作の 3 春とざす 12節

1 春ひらく萃(4曲)

P・D 春日陽子

〃 泉澄子

D 千草麗子

〃 濱眞砂子

G 大ぜい

S 筑紫光子

D 春日陽子

〃 彌生伶子

2 各國の春萃(3曲)

D 如月冴子

〃 彌生伶子

C 大ぜい

S 春日陽子

3 春の讃歌(主題歌C)

S 御船明子

4 流浪の春(流浪者の歌)

B・G 大ぜい

5 春化粧(いつも若く美しく)

T 御船明子

〃 春日陽子

〃 霞浦子

6 禁制の春

(女人禁制・ウナロオザ)

S 芳野壽美子

C 日野綾子

〃 花丘美智子

〃 櫻木美奈子

〃 富士峯子

7 春のチヨコレート

(兵隊の唄・ペルシヤ行進曲)

G 千草麗子

〃 夕月照子

〃 濱眞砂子

〃 藤波珠子

〃 泉澄子

〃 彌生伶子

8 銀翼の春(飛行士の唄)

G 如月冴子

〃 春日陽子

〃 霞浦子

〃 筑紫光子

〃 御船明子

9 春の晩鐘(詩人●農夫)

D 日野綾子

〃 富士峯子

10 さらば春(〃)

D 泉澄子

〃 彌生伶子

G 大ぜい

11 春とざす(主題歌A・B・C)

C 全員

12 初夏の訪れ(フイナル)

F・G 全員

1 三つの小皿

明朗な天性を以て 勤勉努力をモツトーとする頗る愉快なチビ公の北島多七君は 自轉車屋の小

大きな体格とい腕力を持ち乍ら

慾な女主人から充分うものも與へられずに こき使はれていゐるノロ公の小谷辨吉君は 酒屋の丁稚

純眞で可憐な そして同情心にとむ吉岡留子さんは 果物屋の子守

 三人の境遇はよく似てゐた

 三人は近くに住んでゐた

 で 三人の間に自然に發露する美はしい友情があつた

2 ネメチエック少年の夢

皆さん

 ネメチエック少年は よつぽど遊び疲れたのでせう まだうたゝ寢を續けて居ります そして矢張りさつきのいくさごつこの夢を見てゐるのです

 私共は 彼のこんなにも可憐な 美しい心の夢を いつまでもこはさぬ樣にそつとして置いてやりたいものです

3 春とざす

(1) 先づ三月上演(春ひらく)の中4曲を萃して三部作の第一部を

(2) 次に 四月上演(各國の春)の中3曲を萃して第二部を暗示し

(3) さて ピエロの唱ふ主題歌に第三部は始まります

(4) フランスとスペインの國境 ビレネー山中を流浪する密輸入者の群れ 愛慾の春 生と死の闘争

(5) 人形使ひのお爺さんが 古い人形に春化粧 ハテ人形は踊るでせうか

(6) 男がれば女は魔物 女がれば男が魔物 そこら邊りに こんな都合のいゝ神樣は居りませんかネ

(7) チヨコレートの兵隊さん 勇ましい進軍 百萬の敵何のその だがお日樣には閉口閉口

(8) 晩春の空に五機銀翼をねて何處へ

(9) 一枚の活人●に 春の晩鐘を聞きませう 一日の仕事を終へて感謝のり うらやましい田舎の生活人生の幸福なんて結局 こんなところにあるのではないでせうか

(10) ア 如として夏の先觸れ オー逝く春よ さらば

(11) では皆さん さよーなら 三ヶ月にわたつて その狂態をくりひろげた春も いよいよ とさす時が參りました

(12) ソレ もう夏が此度は自分の番だとばかり チラリと顏をのぞかせてゐるではありませんか

歌劇日記中より

◇三月二十七日 今立郡舟津年團の招聘により午后七時より鯖江劇場にて公演

◇三月三十日 坂井郡芦原町愛國婦人會の招きにより午后二時より福原劇場にて公演

◇四月十二日 女子フアンの會

午后二時半より開會 竹内さん外九名の方が參會●から中途に千草濱日野の三名が參加した

淸水百合子さんからの電を披露して本月の批評に入る

一、ネメチエック だいたいに於て好評であつたが 流石に女の方は細かい所に目が附いて 紙片の渡し方が拙かつた 女が一人も出ないのが寂しい 夕月の二役が目立ちすぎる ゲレブの花丘もう少し男らしくなどの話が出た

二、春怨倭歌 主役に少し遺憾があつた御船のセリフが分らぬ 櫻の花の散るのが多くすぎた 化粧の衿元が黑かつた 濱の服裝がバタバタしてゐた等々

三、各國の春 よかつた 綠のバックとても感じがいゝ へうたんの切拔きもいゝ思ひ付 春日の二重瞼きつくすぎた 乳バンドがなくてハツキリ分る 月が中途で消える 等々

最後に舞台樂屋を縱覧して散會

◇四月十五日 足羽郡上文殊村機業家職工慰安會一行の總見あり

◇四月二十日 歌劇を語合ふ會

午后三時より東の間で開催 平澤 田邊 增永 伊藤() 白田 鈴木の舊知六君と 新進林 野原二君を迎へ 田中 岡崎 橫山が交代參加した 伊藤君司會

一、春怨倭歌 主役が適役でなかつた 古典の服裝考證はしたか 龜の甲をやくのは(龜トの法とて昔の占ひの一種) 陰陽師はあの頃であつたか 第二場の毛布は變てこだつた 背景の色がくすぎる この物語に對してはもつと夢の樣に淡い色彩を以てせねばならぬ 二塲の丸太作りの家の窓が近代調があつて不調和だ 三場の木の間に張つてあるものは何か(覆だ 樹間をねて雨露を凌ぐ覆を作つてある)濱の歌がパッとせぬ蔭唄にすればよかつた曲もあまり感心せぬ 三塲の戰の塲物足りぬ等々々

二、ネメチエック 服裝が明かでない 夕月の二役 カンヌキのドア客席から見て變てこだ 洋服屋の父も母も氣分が出てゐない

三、各國の春 一の日本の春あまり短かすぎる アラビヤは佳 巴里エロすぎるといつた人がある 御船のソロ良し イギリスのズボンにをぬつたのが分つていかぬ トウダンスを入れたら 今月のはすべてテンポが早い等々々

最後に入場料の問題が出た

これについては 當部でも色々と思ひ惱んでゐる 何れ近き將來に何等か最適の方法を以て諸君の要望に副ひたいと思つてゐる

五時散會

五月の會

五月十四日 午后二時

女子ファンの會

會費 金二十銭

五月十九日 午后二時より

歌劇を語合ふ會

會費 金二十銭

歌劇に對して多少とも興味を持たれたり 又それを愛好して伸し育てゝやらうと思はれます方は どしどし御參會下さい

六月の豫告

ハンガリー夜話 愛と死の戯れ 一幕

コドモカゲキ 魔法テーブル掛け 4場

ヴアライテイ 夏のメロデイ 8景

四月の感想

◎四月公演評 K生

一、二共に平面的だ 点シナリオに在り 一に於ては日野の鼻に掛つたセリフ 藤波の無表情 まだまだ勉の餘地がある 二の凡作 良い所は野陣位だ 濱のクセのあるセリフ 芳野の貧弱 筑紫が稍ガツチリしてゐる 三は先月に比べて見劣りする

1.親しみが持てる 2.素晴しいステツプ 3.のタンゴ 4.のレツグシヨー 6.のタランテラも衣裳でコワしてゐる 5.のスペインと 8.のアラビヤは凡ての点に於て佳 ラストは平凡 希望を來月公演にかける

◎愚評失禮 とみ子

一、背景氣持がよい 藤波さん一寸可愛いが落着きが足らぬ シヤツの夕月さん 筑紫さんと共に男役として好い 女役は駄目 二、濱さん堅すぎる 三のフランスは華美 スペイン衣裳が古くて陰氣 今月のは何れも刺激がなくて物足りない

◎四月偶感  矢尾生

一、ゲレブ君も少し活發にやつてほしい 君はいつも言葉が訛つて姿態が女々しい 藤波好適 全体を通じて少年らしさがあつた 二、濱眞砂子妙技百パーセント 三、日本の春に興味が湧いた 最後の滿州の春は 皇帝陛下御來訪の意味からであらうが何か特長の●のが見たかつた

◎鄕土をほこる演藝座 藤井政S

一、全体的によく出來た 二景のゲレブがエンマ帳につける時もう少し寫實的にやれ

二、佳作 シナリオも バツクも上出來

三、春にふさはしい艶舞であつた

◎四月の寸評  藤子

一、四期生の藤波可なり上手に出來た しつかり勉して下さい 二、申分なく上出來 三、前より望んでゐた日本髪 よく似合つた 今後もこの種のを時々見せてほしい フランスの乳部をかくしてほしい 夕月 如月の大きなのがダラダラ動くのが見苦しい イタリーは千草でなければ出來ない見事な演技 それから日本の旗を白い糸でひつぱつてゐたがまづい 黑い糸ならよかつたらうに

◎我等らがDSKを讃ふ KK生

櫻花と競ひ四月のDSK それはフアンよりる讃の言葉だ 諸君は我等のオワシスだ 福井に過ぎた藝術殿だ 北陸一の存在だ それが四月に送つた巨彈 その取材 其の構成萬事OK 春怨倭歌にて濱君 芳野君 筑紫君其の他よく役柄を理解して この一篇を生かしてゐた 照明バツク伴奏もよい 伸びよ 磨けよ DSK

◎寸評 銀嶺子

一、藤波仲々よい所がある 勉せよ

二、濱の役 彌生の方がよかつたらう

三、三月より落ちる 日本の春印象に殘る スペインの春もよい 觀客諸君よ 拍手を惜しまずに 彼等を激勵して與給へ

◎四月公演短評 笹夕美也

全体として三月と大差なし 第一第二と重魘壓な雰圍氣に觀客をして倦怠逃避を起さしめた第三に至つて飛躍的演出に僅に沈靜から解除し得た

一、コメデー物として無 最後の夢の幻想を生かす爲に照明とバツクに三月の春ひらく的なリゝシズムを望みたかつた

二、濱の不熟と聲量枯の爲不評 但千草如月筑紫の力演により駄作をれしめた

三、フレツシユな味と淀みなき進行振りは再觀の期待すら橫溢せしめた 佳作 モンテカルロの艷情的な雰圍氣 スペインの輕快さ アラビヤの建築的なバツクと感覺味たつぷりな演技 イギリスの紳士的な品位等々讚を惜まない 惜むらくはフイナルが冗漫になりすぎたかの感がある

◎四月の公演 ポープ

一、純な作品 主役藤波にも少し熱と力とあつてほしい 台詞惡し 練習されたし 日野の園長先づ可 落つきあり 富士の男役惡し めゝしい所あり 夕月よし

二、芳野熟なし ロボツトの如し 表情はあれど 聲樂も惡し 筑紫も聲樂を練習されたし 濱の媛惡し 特に獨唱か

三、1.始まりよし 2.泉 夕月 千草のタツプよし 3.春日霞の踊意味をなさず 4.彌生のも意味なし 振付が同じ一考されたし 5.筑紫よし 踊をせいぜい習されたし 6.道化はよく出來てゐる

◎個人短評 增永生

泉澄子 —春日と同じく二期生 如月夕月と共に當部の男型だ 二月北境の夜明には主人和泉澄造に扮し その演技振りは主人澄造の性格を十二分に描寫して近來になき出來榮えであつた 彼女の演技は全く文字通り情熱そのものだ その特徴は 獨特な台詞にあつて 癖のある台詞が一男型の泉たらしめていゐる だがきく者をして老人ぢみた嫌な感じを抱かしめる様だ 特に發聲と台詞に注意を要す 今迄の演技では水黄門 殿樣自由廢業の山賊 彌次喜多の猫番頭に扮して好評であつたが 最近レヴユーにも進出し珍演妙技を見せてゐる 月と共に冴えゆく彼女の演技に 幾多のフアンを擁してゐるが 特に女學生間に持囃されてゐるのは男型の彼女にして 似合ぬから不思議だ 彼女の進むべき道 それは大分を十二分に發揮して 何處迄も男堅の泉澄子になつて伸びなければならぬ

芳野壽美子 三期生隨一の好漢?だ 一期生の御船と共になくてはならぬ歌姫 發聲が自然で無理がないと折紙まで附いて 最近めきめき賣出して來た 彼女の得意はレヴユーもの 役割は先づ八方向とはいへないが自然で律動的な美聲は男型のヨシノにならしめてゐる 肉付の薄い彼女の体は侍役に向かない 最近のものでは殿様自由廢業の信乃 彌次喜多の女房に扮して好評を博し レヴユーでは花聟聯隊のブン大將三銃士のアラミスに扮しゐる しかし慢心と油斷は藝術家の大敵だ 大に自重して 更に更に大飛躍を期せよ (以下次號)

◎氣づくまゝ 信濃生

フアンの喚聲に舞台上の人物が崩れることがある こんなことで劇中の人物が左右せられることは面白くない 諸孃よ ウヌボレは早過ぎる 緊張して更にガンバレ

◎地方文化の程度を 林翠生

DSKの方向に就ては色々議論のあることでせうが一番大切なことは福井の文化と並行して行くことでこれを無するなら無謀と言へませう 中には寶塚や松竹と比べてかうかう でなければならぬ等の批評が行はれる様ですがそれは福井地方の文化の程度を考慮に入れないでは凡そイミない事です

◎四月寸評 佳珠生

一、藤波はかなりうまかつた然し全体として少々ギコチない所もないではなかつた 演じにくいのかも知れぬ

二、斷然濱が光つてゐた眞劍さがあつた一

の奮勵を切望する

三、南風の薰ずる此頃にふさはしい 僕は一二の餘興?として見た 寶塚のを見た後なので少々ゴツゴツした感がした 精進を望む

◎照明●共に美し

徒然の春宵初めて觀客の一人となつた フイナルまで實に熱の張った演技振だ 殊に春怨倭歌の如きは讚するに餘りある出來だ 可愛い少女の演技 それこそは客の一日の疲勞を拭ひ大なる慰安と藝術心の向上をどれだけ圖つてゐるか知れない 余はその藝術の美よりも 更に美しい人情の美を隣席にて拾つた 隣には体格偉大の靑年が座し その後に未知の老婆が頻りに顔を横に出して体を動かして見物してゐた それと知つた靑年は「見にくいでせう替りませう」と立つて老婆の手をとり席を譲つた 一寸出來さうで出來ない謙讓 眞に男性的な態度の美は 春怨倭歌と共に忘れる事が出來ない

◎閑筆 春江

春怨倭歌 櫻花の候の宵にふさはしく今月公演中の佳作 大体よく演つてゐるが 盤城媛の濱 嗚咽と煩悶にまだ表情の苦慮が足らぬ 高志の筑紫容易に台詞動作を演じてゐるだけで深みがない即ち心のメーキアツプが足りない

これは此劇のみではないが演技中?々バツクの動揺を見る殊に劇のクライマツクスに於て突如バツクの動揺があると藝術美の陶醉境にある觀客をして夢幻の天海から現實の地上に堕せしめるやうな苦がさを味はしめる 當事者の切に注意を望む一つだ

◎用語が 失名

用語が固くすぎた 人道主義 平和などもつと古典的に夢幻的に繪畫的にいつた方がよくはなかつたか 濱の主役は荷が重すぎた感がある

◎春怨倭歌 FN生

M・H君の藝術については僕は縷々する才能は有たないが たしかに女役には適はしくない 君の線といひ 体といひ そして君の向上の爲 もつと考へてほしい

又君は熱心が足らない 最初より最後迄緊張味を失はない様に 舞台の爲にでなく 觀客の爲にでなく 盤城媛の爲に だが之を見て 君の一脈の向上は認めるが 一層の研究を望み 次回を待つ

◎四月盲評 花咲く里

一、題材も筋も面白い 役が少々物足りない 四期生だから無理もないが

二、これもテーマーはよい DSKにはあまりない戀愛物だ 唯役々がしつくり來ない 濱芳野筑紫如月千草 主なる役々には感情の滲出が足らぬ セリフに妙な抑揚がある 表情に間の拔けた所がある 勉を望む

三、各國の春 題名にもつと氣のきいた付け方がなかつたか 群舞の洗練が足らぬ これは舞台の狭い故もあるのだが 各人思ひ思ひの動作では凡そイミないことだ

DSKクローズ・アツプ

(その三−御船明子君の卷)

日本が世界に誇るプリマドンナ?屋子先生から 激勵の言葉を頂戴した御船君の唄は 現在DSKの至寶と云へる

(玉磨かざれば光なし) この惠まれた咽を持つ幸福な御船君に いさゝか愚見を呈し度い

先づ(御船君に千草君の演技や筑紫君の舞踊を求めるのは求める方が無理だ)と云ふ意見に 賛意を表すると同時に 然し乍ら或る程度 即ちDSKの水平線への到逹は 是非必要ではないかと思ふ

(プリマドンナの資格は勿論聲樂を第一とするが若干の舞踊的修練と演劇的要素を含む事に疑ひを入れない)などゝしく云はなくとも この二者の缺乏が現在の御船君に 幾許の損害を與へて居るか?

次は その表現に一抹の詩を匂はせて貰い度い事である 御船君に先づ詩人であつて貰ひ度い事である

凡る藝術には詩がなくてはならない 又凡る藝術家は何よりも先づ詩人でなくてはならない こゝに詩人と云ふのは 何も詩を創作するとか歌を書くと云ふ意味ではない 詩感を持つと云ふ事 詩に對してな感覺を働かせると云ふ事 詩情を豊富に湛へると云ふ事に他ならない

之は 少女諸君全体に考へて貰ひ度い事だが 御船君には特に參考になると思ふ

以上 甚だ漠然とした云ひ廻しだが 御船君が精神的に肉体的に より一層の磨きをかけて 名實共にDSKのプリマドンナになる事を 切望してやまない

最後に 御船君を初めとして 夫々得意の音色を匂はす如月櫻木芳野富士諸君等々唄に於ける將來の發展は まことに興味深い宿題である事を附記して置き度い

御寄書歡迎

歌劇に對する御意見なり 當歌劇部の月々の公演に對する御批評御感想等を承りたいと存じます

紙面が狭小ですから可成簡約に このタイムスの末葉 御記入を御切取下さつて こゝへ御記入の上 出札口の橫にある寄書箱へ御投入を願ひます

紙面の都合で載出來ないやうなことがありましても それは御許し下さるやう 豫め申上げておきます

感謝

タイムス發行以來 月皆様の御批評御感想を御寄せ下さいますことを感謝いたします 頁數を增して見ましたけれども まだ全部を載せ切れないので 申譯なくも 割愛を餘儀なくしたのが幾通かあります 然し 增頁にも限度がありますし 濟まないとは存じながら 御諒怨願ふより外はありません