だるま屋少女歌劇

1934年(昭和9)11月:少女歌劇タイムス

1 腕

2 スポーツ風景

3 殿樣自由廢業

虚僞と侫との生活に厭いた殿様が 自ら城を逃げ出して山賊の仲間に入り 茶店の雇人となり そこに眞實の人間味 本然の生活感を体驗するたわいもない喜劇の中に 人生の或ものを暗示したものである

4 赤い風車

秋にふさはしい收穫  增永生

十月公演の北莊落城を見た 劇は人間勝家の最後を織立てたもので 鬼柴田と異名を取つた勝家の面目は 老巧秋月小夜子によつて遺憾なく發揮され 名將らしい落着味を見せた秋月の演技振りは近來になき出來 榮確に滿点 勝家のコントラストである小谷の方に扮した筑紫光子は惡くはないが平凡 技巧的に流れずもう少し自然味を追加して欲しい 然し小谷の方の苦哀の表現 茶々仲千代の可憐な姿は觀客の涙を誘ふに充分勝家が近親者を集めて別離の宴を張つた塲面を家臣の舞踊で飾り 謠曲を謠つたのはよい着想だ 小島新五郎に扮した四期生の富士峯子の演出は特に目を引いた 劇は總体的に調和のとれたもので 史劇ものとしては佳作だ 演出に第四期生のデビユーも加はり皆好演技を見せてゐるが 秋月の熱演は斷然他を壓し獨壇上といつた感がある 然し秋にふさはしい收穫として北莊落城を讃す