梗
◇松木莊左衛門
◇灰色の妖花
マタ・ハリ
幼時シヴア神の舞妓として インド聖ガンヂス河の岸邊で 國王の前で御前舞踊をやつたと自稱する彼女
後年 パリーのヴオードビルで「紅衣(レツド)のダンサー」と唄はれた彼女
やがて國際的超スパイとして ヨーロッパの戰線に死の舞踏を演じ廻つた彼女
最後にヴアンサンヌの射撃塲で 悲壯極りなき悲劇の主役を實演し終つた彼女
今こゝに その彼女を拉し來つて潤色し その片影を描かんと試みたものが この「灰色の妖花」一篇であります
西暦一九一七年 動亂のパリーを舞台に 獨佛兩國のスパイ戰を背景に 豪快ピロ將軍と 奸惡アンドリアスの好取組 妖媚マタ・ハリに對する情熱の士官ロザノフ 純情の乙女ナタリー その他三枚目としてオーレック伯から舞台廻しのモルナール少尉等等等 卍字巴と入亂れます