だるま屋少女歌劇

1933年(昭和8)2月:少女歌劇二月公演番組

◇薩摩守忠度

壽永三年 驕る平家の一門は都を落ちて福原城に立てこもる 薩摩守忠度は 一旦都を離れしが心にかゝる事ありて引返し五條三位俊成の門を叩き 携へたる自作の歌集を取り出し 千載和歌集御撰の時は一首なりとも撰に入りたき願を述ぶ 俊成その優しき志に感じ承引の旨を答ふ 忠度喜んで戰塲に向ふ途中 兎原の里にて俊成の娘菊の前忠度の後を慕ふてまたこゝに來る 忠度懇々理非をさとして暇を告ぐ 梶原景高忠度の在所を知つて召捕に向ひ却つて忠度に追ひ散さる 岡部忠澄 判官義經の命により兼て俊成に申出でたる忠度の詠歌入撰の旨を傳ふ 忠度喜んで戰塲に於て再會を約し 遂に福原西門に於て忠澄に討たる

◇ジャックと豆の木

貧しき母と二人暮らしの少年ジヤツクは 母の手におへぬいたづらつ兒でありました 家がいよいよ貧乏になつて 唯一つの財として殘つて居る牝牛を賣ることになり ジヤツクは牛を引いて市に行く途中 肉屋の持つて居た一粒の豆と牝牛とを交換しました 母は怒つて豆を地上に投げつけると 不思議や豆はまたゝく間に成長して 高く星の世界に届きます ジヤツクは豆の木をよぢて 空の世界に來て見ると そこは魔王の國でありました ジヤツクは魔王を退治して王樣ジヤツクとなり威張つて居りますと 魔王が再び現はれてジヤツクを捕殺さうとしますので驚いて母の助を呼びますと 牝牛がペロリと顏を甞めたので夢からさめたといふ 罪のないお伽歌劇

◇相馬の古御所

怪奇變幻の妙を極めたる 國民的の大傳奇物語として名高き大宅太郞光國と 瀧夜叉姫とのローマンスを仕組んだる幻想的舞踊劇

朝敵として討たれたる父將門の宿志をついで 天下をくつがへさんとの大望を抱き 父が由緒の古御所に立籠る 咲きほこる毒花の如き變通自在の瀧夜叉と 勅命に依つて之を討たんと單身死地に乘込んだる文武兩道にすぐれし白面の美丈夫大宅太郞光國を主人公とし配するに鼻水多羅四郞なる假想の豪傑をはじめ さまざまの妖怪異形のものを以てす 雨か嵐か 豊國國芳等が好んで描く如き凄艶なる舞台面

御休憩のときは喫茶部へ

歌劇塲の スグ橫の かこゐのなかが喫茶部でございます

紅茶     五錢

コーヒー   五錢

ホツトレモン 五錢

カルピス   十錢

ココア    十錢

ぜんざい   十錢

ケーキ    十錢

プリン    十錢

ミルク    十錢

フルーツ(果物) 十錢

ソーダ水   十五錢

三ッ矢サイダー 二十錢